平成26年度の活動

  • 平成26年度は会長のご逝去に伴う悲しみのうちに出発しましたが、 新しい会長に小澤普照氏(元林野庁長官農学博士)をお迎えすることができ、新役員人事のもと、 なんとか活動を継続することができました。
    26年度の具体的な活動内容は以下の通りです。
  • 1.生活向上支援事業
  • 栽培技術支援事業(フィリピン国ケソン州ナカル)
  • 平成24年度実施のナカル農民を主体とした農業先進地域研修ツアーの参加者、 農民組合員(1NGENN)及び代表と26年9月、27年2月に打合せを行った。
    26年9月は農民所有のナカルの農地を視察。平成16年の台風により壊滅した地域で、 塩害より未だに土壌が回復していない農地や傾斜地の農地を視察した。
    また、27年2月は合原裕人専門家の参加もと、農民組合の有機肥料工場や製造された肥料を視察した。 その後、合原専門家によるセミナーを開催した。当初「キノコ」の栽培をテーマに行う予定にしていたが、 組合員の要請により有機栽培についてのセミナーを行った。
    合原専門家も「キノコ」の栽培には費用も時間も要すること、 また、すでに良質な有機肥料が製造されていることからマニラでの有機野菜や有機肥料の販売価格や現状の説明を行った。 さらに、有機肥料は販売先を探すのが難しいことから、生食用の有機野菜栽培を行ってはどうかとの提案があった。 その理由として、ここ数年、マニラなどの富裕層に野菜をサラダとして生で食べる習慣が普及していること、 およびナカルの自然気候がレタスなどの栽培に適しているのではないかということがあげられた。
    農民組合の代表からは、良質な有機肥料ができているので、これを活用して栽培を行いたいので、技術指導をお願いしたいとの要請があった。
    そこで、これまで栽培の経験がない農産物なので、技術指導はフィリピン農業に精通している農業大学の教授などに担当していただき、 ナカル地域の新しい特産物として道を開くことを目指して、農民組合 の土地で試験的に栽培を行う計画の支援を協議している。
組合員とのミーティング 組合員の畑を視察
(塩害により作物が育たない)
  • 合鴨農法技術移転事業(フィリピン国タルラック州ラパス)
  • 先年、農園開発の農業技術指導に当たっていただいた古野隆雄博士は、 「合鴨農法」の世界的実践者であり、指導者である。 米が主食のフィリピンでも、害虫駆除や無農薬農法として「合鴨農法」は注目されているが、いまだその普及率は低い。 タルラック州ラパスの農民組合より合鴨農法を試みたいとの要望があり、古野博士に現地指導をお願いし、 合原裕人専門家がプロジェクトアドバイザー、責任統括者としては井上が担当することで事業計画を立案した。 このプロジェクトはJICA草の根技術支援に募集する計画で、「事案アイデア相談」として担当者との打合せを行い、 実施体制及び現地との調整を行っている。
  • 2.植林及び環境保全教育事業
  • 環境教育セミナーの開催(フィリピ共和国ケソン州ナカル)
  • 協会では平成19年以来、ケソン州ナカルで崩壊山地への植林事業を実施してきたが、 山中にはいまだに多くの崩壊地が残っている上、他地区からの新しい住民の参入などにより、天然資源、 樹木の減少が目立っている。このまま人口が増加すれば、天然資源の枯渇、環境の破壊などを引き起こし、 貧困の拡大をもたらすことから、日頃からの植林及び自然環境保全についての啓発活動が求められている。
    協会では、先年より小学校校長、学校運営財団(TCD)の要請を受け、小学校児童学童及び父兄、地域住民を対象として、 環境保全教育と学校林植林活動を行っている。
    26年度は25年度に引き続き、小学校の本校・分校において環境セミナーと 植林ワークショップを開催し、環境保全意識の向上、技術移転を図った。
    セミナーは、自然環境を適切に管理することによる天然資源枯渇の防止を目的に、先住民小学校の児童、父兄、居住者を対象に行われた。 合原裕人専門家の指導のもと、森林・生態系の保全と植林の意義、植林の具体的技術などを図や写真で学童にも理解できるよう、やさしく解説した。
    ○実施日時:27年2月、26、27日
    ○セミナー参加者:本校・分校学童80名、教師5名、父母及び住民30名
    ○実施スタッフ:指導:合原裕人環境保全技術専門家(マニラ在住)
    アシスタント:プロジェクトマネジャー:井上いづみ(協会員)、通訳、現地スタッフ 計3名
  • 植林ワークショップの開催
  • 本年度の植林ワークショップは主として分校で行われたが、分校に隣接する裸地で、合原裕人専門家より植え方の指導を受けた後、 保護者に付き添われた児童がそれぞれ果樹の苗木カラマンシー、ランブータンを計30本植えた。 参加した児童と教師、保護者には大変好評で、特に児童は、自分で植えた苗木は自分の果樹として大切に育てていくと喜んでいた。
    また、25年度、本校に植栽した苗木の育成フォローアップは、26年9月と27年2月と2度にわたり実施した。
    植栽したカラマンシーはどれも根付き生育していたが、雑草をとり、蔓払いを行うなどした。また、傾斜地であることによる土砂流出防止のため、 合原裕人専門家の指導のもと、盛土を施した。5年生、6年生の20名、保護者10名前後が参加し、児童たちが盛土を施している傍らで、 保護者も雑草をとり、蔓払いなどを積極的に行っていた。 地域材のナラも5、6年生が30本植栽した。今後、ナラなどが成木した暁には、学校の増設、補修、修繕に利用していくことを目指している。
  • 3.教育支援事業
    ・先住民小学校への支援(フィリピン国ケソン州ナカル・カタブリンガン)
  • カタブリンガンにある先住民小学校は標高300mの山中にあり、現在、本校、分校併せて120名の学童が通っている。
    地域の識字率向上を図る校長の熱心な呼びかけにより、近年、父兄の教育への関心が高まり、学校に通う生徒が増えてきている。 問題はそれに伴い教室が足りなくなり、教室増築への支援要請を受けた。協会としては、支援先を模索するとともに、 ファイスブックやホームページを通じで広く協力を呼びかけている。教室増築の建設資金調達を目的にクラウドファンディング (インターネット経由での資金調達)も企画しているが、実施は27年度に持ち越しとなった。
学校運営財団(TCD)で打ち合わせ 先住民小学校で教室を増築(当協会も材料費の一部を寄贈)